昨日覚えたはずの単語を、今日にはもう忘れている。「うちの子、記憶力が悪いのでは」と心配になるかもしれませんが、安心してください。覚えたそばから忘れるのは、脳の正常な働きです。
問題は忘れることではなく、忘れっぱなしにすることです。この記事では、忘却の性質と、それを逆手に取った復習のタイミングについて整理します。
忘れるのは欠陥ではなく仕様
心理学者エビングハウスの古典的な研究以来、記憶は学習直後から急速に薄れ、その後はゆるやかに減っていくことが知られています。いわゆる「忘却曲線」です。覚えた直後の急降下は誰にでも起こります。記憶力の良し悪し以前の、脳の基本仕様なのです。
脳は毎日大量の情報を浴びており、全部を保存するわけにはいきません。そこで「使われない情報は捨てる」という整理を常に行っています。逆に言えば、繰り返し出会う情報は「これは重要だ」と判断されて残ります。復習とは、脳にその判断をさせるための再会なのです。
復習のたびに、忘れにくくなる
忘却曲線には希望のある性質があります。一度忘れかけて思い出した記憶は、次に忘れるまでの時間が延びるのです。
1回目の学習後はすぐ忘れても、翌日に復習すれば数日持つようになり、数日後にもう一度出会えば今度は週単位で持つ——。復習を重ねるごとに忘却のペースは緩やかになり、やがて「見ないで打てる」「考えなくても出てくる」レベルに定着します。
つまり復習は「同じことの繰り返し」ではありません。1回ごとに記憶の耐久力を上げていく、段階の違う作業です。
ベストタイミングは「忘れかけた頃」
では、いつ復習するのが効率的か。原則はシンプルです。
完全に忘れる前、思い出すのに少し苦労する頃。
覚えた直後にもう一度見るのは、実はあまり効きません。まだ鮮明に覚えているので、脳が「思い出す」努力をしないからです。逆に完全に忘れてからでは、ゼロからの学び直しになります。「えーっと……」と数秒がんばって思い出せるくらいの絶妙な頃合いが、記憶を最も強くします。思い出す努力そのものが、記憶を鍛えるトレーニングなのです。
家庭で意識するなら、まずは「翌日にもう一度」から。そして間隔を少しずつ空けていく。数日後、1週間後、と再会の間隔を広げながら、それでも思い出せるかを確かめていくイメージです。
ただし、手動でやるのはかなり大変
理屈は簡単ですが、実行は大変です。中学で学ぶ英単語は1600〜1800語程度。単語ごとに覚えた日も忘れかけるペースも違うのに、「どの単語を今日復習すべきか」を親子で管理するのは、正直なところ現実的ではありません。単語帳に日付を書き込む方法もありますが、数百語を超えたあたりで破綻しがちです。
ここは道具に任せてよい部分です。学習記録から「そろそろ忘れかけている単語」を選んで出題してくれる仕組みがあれば、親子は「今日の分をやる」ことだけに集中できます。復習のタイミング管理は、人間の根性ではなくシステムの得意分野です。
まとめ
- 覚えた直後に忘れるのは脳の仕様。忘れること自体は問題ではない
- 復習のたびに忘れにくくなる。復習は繰り返しではなく、記憶の耐久力を上げる作業
- ベストタイミングは「忘れかけて、思い出すのに少し苦労する頃」。まずは翌日、そして間隔を広げる
- 1600語超の復習管理は手動では破綻しやすい。道具に任せる部分と割り切る
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