リスニングの点が伸びない。本人いわく「速すぎて聞き取れない」。だからリスニング問題集を買って数をこなす——のに、伸びない。
こういうケースでは、原因がリスニングの外にあることを疑う価値があります。ベネッセ教育総合研究所の調査(外部サイト・新しいタブで開きます)では、中学生の65.8%が「聞き取りが難しい」と答えていますが、その少なくない部分は、耳の性能の問題ではありません。そもそも、単語の正しい音を知らない——この記事では、この「音の未登録」説を掘り下げます。
聞き取れないのではなく、「照合できない」
リスニングとは、聞こえてきた音を、頭の中の単語リストと照合する作業です。ここで大事なのは、照合が成立する条件です。
頭の中のリストに、その単語が正しい音で登録されていること。
たとえば、workを綴りのローマ字読みで「ウォーク」と登録している子がいたとします。音声で /wəːrk/(ワークに近い音)が流れても、リストの「ウォーク」とは一致しません。結果、「知らない単語が来た」と処理されます。単語としては知っているのに、音としては初対面——これが「聞き取れない」の正体の1つです。
この状態でリスニングの練習量を増やしても、効率が上がりません。照合先のリストが間違ったままだからです。問題はリスニング力ではなく、単語を覚えた段階での「音の登録ミス・未登録」にあります。
音の未登録は、覚え方の習慣から生まれる
なぜ音が未登録・誤登録になるのか。原因は、単語の覚え方にあります。
- 文字だけで覚えている: 単語帳を目で眺め、綴りと意味だけを結びつける覚え方。音の情報が最初から入っていません
- ローマ字読みで自己流の音をつけている: 音声を聞かないまま綴りを見ると、頭は自動的にローマ字の規則で音を補います。この自己流の音が「誤登録」として定着します
- カタカナ語の音で上書きしている: energy(エナジーに近い音)を「エネルギー」で登録しているケース。日本語に入った外来語の音は、元の英語としばしば別物です
共通するのは、単語との最初の出会いに「正しい音」がなかったことです。
対策: 単語学習の入り口に、音を組み込む
対策は、リスニング教材を増やすことではなく、日々の単語学習の手順を変えることです。
新しい単語は「音が先、綴りが後」
新出単語は、必ず発音を聞いてから綴りに進む。この順番を習慣にすると、すべての単語が正しい音つきでリストに登録されていきます。発音つきの単語教材(タイピング型なら、聞いて→打つの流れが自然に作れます)は、この習慣を仕組みとして強制してくれる点で有効です。
既習単語は「音の棚卸し」をする
すでに覚えた単語には、誤登録が混ざっています。あぶり出す方法は簡単で、既習単語を音声で聞いて、意味がすぐ浮かぶかチェックすること。文字で見れば分かるのに音で分からなかった単語が、誤登録・未登録の在庫です。その単語だけ、正しい音で登録し直します(聞く→真似て言う→打つ)。
「音のつながり」は、そのあとの話
なお、リスニングには単語の音の先に、「音のつながり(前後の単語が連結して聞こえる現象)」や速度への慣れといった段階もあります。ただしそれらは、個々の単語の音が正しく登録されていて初めて取り組める領域です。順番として、まず単語の音。ここを飛ばした聞き流し学習が伸びにくいのは、土台の上に積んでいないからです。
まとめ
- 「聞き取れない」の正体の1つは、単語の音の未登録・誤登録。耳ではなく照合先リストの問題
- 原因は文字だけの暗記・ローマ字読みの自己流登録・カタカナ語の上書き
- 対策は単語学習の入り口に音を組み込むこと。新出単語は「音が先、綴りが後」
- 既習単語は音声チェックで誤登録をあぶり出し、聞く→言う→打つで登録し直す
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